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「ただいまぁ」
あ、兄が帰ってきました。
いつもながら、緊張感の欠片も無い、間延びした声です。
「おかえりなさ……あれ?」
あれ? におわない……。予想外です。
「ん? どうしたの?」
「ええっと……お疲れ様でした」
「うん。今日はおいしい焼酎をもらったから、一緒に飲もうか」
靴を脱ぎつつ、そんなことを呑気に言いながら、あたしに小さな紙袋を手渡しました。
念のため言っておきますが、あたしはまだ十八。要するに未成年です。
「はいはい」
なので軽くスルーして昨日と同じように兄はお風呂場へ、あたしは食事の支度をします。
不器用なあたしですが、拘りがあります。
食事は必ず、兄と一緒にできたてのものを食べます。
なので、まだ簡単なものしか作れないあたしは、兄の入浴中に食事を作ります。
さめたものをレンジでチンなんて、味気ないですからね。
「……ん?」
おかしいです。
そんな訳で、台所にやってきたあたしですが、何故か昨日の兄の足のにおいがします。
おかしいです。
うーん、首を傾げつつと少し見回してみると、テーブルの上に何か得体の知れないものが載っています。
白いビニール袋に入ったソレを恐る恐る覗いてみました。
「………」
あたしは、言葉を失いました。
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