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「あれだよ、あれ。食べるなら『う○こ味のカレーか、カレー味のう○こか』ってヤツ」
「あ~の~ね~!」
彼女は避けようとしていた話題に突入したことに、また、深いため息を漏らす。
そして、空気を読めない自分の兄に今更ながら呆れるのだった。
「カレーを作りながら、僕は考えていたんだよ」
「悪趣味ね」
(お願いだから、続けないで!)
という彼女の切なる希望は、断たれたようだ。
「まあ聞けって」
と、さわやかに笑う顔からは、下品さは微塵も感じられないのだが、この漆黒の青年がこれから何を言い出すのか、彼女はとても不安だった。
しかしながら、彼女に幼い頃から刷り込まれていた「兄への服従心」が台所から立ち去る事も耳を塞ぐ事も出来なくさせていた為、彼女は覚悟を決めて、しかし、せめてもの抵抗に無言および無表情で彼を見た。
「あれってさぁ、『究極の選択』じゃないよね」
「……で?」
「だってさぁ、う○こはう○こであって、カレーはカレーじゃん? 誰もう○こを食べた事は無いんだから、『う○こ味のカレー』を食べるよ。普通なら」
「………」
「でね、その場合、匂いはどうなんだろう? って考えた訳。ルカはどう思う?」
無言で立ち尽くす彼女の答えを待つ事も無く、彼は続けた。
「僕はね、やっぱりう○こはう○この匂いで、カレーはカレーの匂いだと思うんだ」
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