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一何時、会うの。
南海は、養父が嫌いではない。むしろ、落ち着いてどこか気品さえある彼を 尊敬してもいた。だが、“兄”達に会いたいとは思わなかった。何故か彼の直感は兄には会うなと告げたのである。…しかし口の方は勝手に動く。
一1週間後だ。
一解ったよ、父さん。
聞くところによると、兄達は頭は良いが相当の変り者だという。相手にできる自信がない。頼みだった養父は仕事の都合上傍にいない。
代わりにいるのは一。
「何ふさいでるのよ。」
「別に。」
「孤児院の事でも考えてるの。」
「違うよ。」
「だらしないわね。」
「違うってば。」
「何が違うっていうのよ。」
「どうして君がここにいるのさ、西香(サイカ)。」
「お目付け役。あんたの義父さんに頼まれたの。」
わけなく答えて、右手にはめた細い銀の指輪を弄ぶ。日の光を受けて微妙に色の変化する髪を持つその少女は、黙っていれば楚々とした「お嬢様」だった。
「…兄さん達って、まだ来ないの。」
ハッカ煙草に火を点けながら、西香が訊く。
「煙草、止めた方がいいって言ってるのに。」
「…うるさいわね、あんた兄さんたちに会うの、不安なんでしょ。」
わざわざ付いていてやるのだというように、西香は言った。
…南海は、確かに一人で待つよりはるかに心強いと、悔しいが思った。
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