一2一

2/3
前へ
/22ページ
次へ
「……ねぇ。」 西香が来てから半時は過ぎている。 「来ないわね、」 「…来ないね。」 「何なのよそれ…あんた結局、“兄さん”には家族と認めてもらってないんじゃないの。」 「……僕はそれでいいんだけど。」 「じゃあなんで待ってるの。」 「………………。」 「…すぐ黙るんだから。」 何本目かの煙草をくわえ、南海と背中合わせに話していた西香は苛立ちを隠さずに言う。 「その癖直せば。いい加減に。」 「……………西香。」 南海は立ち上がる。 「何よ。」  西香はかすかに青い煙を吐き南海を見上げる。 南海の見ている方向には、こちらに向かってくる人影が見えた。 「一あれがそう?」 西香は自分も立って南海に訊く。 「…………さぁ、」 「…今に始まった事じゃないけど、」 あんたって本当にわかんない子ね、と西香は腕組みをしてこちらに来る人物を待った。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加