静かな予告

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 フロアにはデスクが20席はあるだろうか。  もったいないことに、今動いているPCはたったの2台だ。  しかしここの家賃を僕が払っているわけでもない。  大きなお世話というやつだろう。  社長がそれでいいと言うのなら、それでいいのだろう。  それから僕はその日の仕事をいつものようにこなした。  ある客先へは電話を入れ、またある客先へはメールを。  打ち合せにも外出し、事務員の中村さんとも多少会話をしたかもしれない。  内容は覚えていない。  恐らく他愛もない会話だったのだろう。 『先に上がります』  これだけは伝えたかもしれない。  その後は朝と同じだ。  本の世界へ逃げ込み、短い一日が終了した。   * 『貴方は信じてないのね』 『君は、誰?』 『塚本ですよ。ご存じないかしら』 『塚本……』 『もう一度メールを送らなければだめかしら』 『……メール。……塚本』 『早くお気付きになって欲しいわ』 『僕のことを知っているのか』 『もちろん存じておりますわ。安登蔵さん。……あと6日。楽しみにしております』
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