静かな予告

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 塚本香織という女性からのメールをDeleteした直後、玄関からガチャガチャと音がした。  そのまま足音が近づいてくる。  僕のデスクからは直接音の主は見えない。  ……。 『おはようございます。遅くなりました』  事務員の中村さんだった。  時刻は10:00過ぎ。  まぁいつものことだ。 『おはようございます。体調は大丈夫ですか?』  彼女は最近病気がちであり朝は遅刻が普通だ。  特に問題はない。僕が困るわけではない。 『えぇ、お陰さまで。毎朝遅刻で申し訳ありません。安登蔵さん、コーヒー頂きます』  僕が作ったコーヒーを彼女がカップに入れる。 『安登蔵さんのも注ぎましょうか?』 『まださっきのが残っているからいいですよ。ありがとうございます』  彼女は30代後半だろうか、僕より年上なのは確実だ。  同じ会社とは言え女性に年齢を尋ねるのは気が進まない。  自然と敬語になるのは仕方ない。  彼女との会話もいつも通りだ。  朝の雑談もそこそこに、彼女もPCを立ち上げ仕事に取り掛かる。  オフィスには僕と彼女の二人しかいない。
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