1013人が本棚に入れています
本棚に追加
塚本香織という女性からのメールをDeleteした直後、玄関からガチャガチャと音がした。
そのまま足音が近づいてくる。
僕のデスクからは直接音の主は見えない。
……。
『おはようございます。遅くなりました』
事務員の中村さんだった。
時刻は10:00過ぎ。
まぁいつものことだ。
『おはようございます。体調は大丈夫ですか?』
彼女は最近病気がちであり朝は遅刻が普通だ。
特に問題はない。僕が困るわけではない。
『えぇ、お陰さまで。毎朝遅刻で申し訳ありません。安登蔵さん、コーヒー頂きます』
僕が作ったコーヒーを彼女がカップに入れる。
『安登蔵さんのも注ぎましょうか?』
『まださっきのが残っているからいいですよ。ありがとうございます』
彼女は30代後半だろうか、僕より年上なのは確実だ。
同じ会社とは言え女性に年齢を尋ねるのは気が進まない。
自然と敬語になるのは仕方ない。
彼女との会話もいつも通りだ。
朝の雑談もそこそこに、彼女もPCを立ち上げ仕事に取り掛かる。
オフィスには僕と彼女の二人しかいない。
最初のコメントを投稿しよう!