きっかけ

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神様は舞い降りてはこなかったが、この拷問のような時を止めてくれる救世主が到着したのはそれから間もなくだった 「とりあえず事情を伺いましょう」 と現れたのは警察だった 気付けば周りには野次馬が集まりだしていて、その内の誰かが通報してくれたのかもしれない 教習所で、万一事故を起こしたら性急に警察に連絡しろといわれたのを今更思い出した。パニックに陥るとまともな判断が出来なくなるのだと改めて認識したあたりから、少しずつ俺は冷静さを取り戻し、置かれた現状を少しずつ頭の中で整理していった 歩道で警察の事情聴取が始まったが、相変わらずチンピラは激高したまま、警察にも食ってかかっていた 結局チンピラの怒りは静まることはなかったが、警察の仲介のおかげで、保険を通して弁償することで話はまとまった。自動車保険に入っていなかったら…と思うと脂汗がでるが、一応助かった。とは言え、弁償、罰金やお詫びやらである程度の額を負担しなくてはならない。その合計はザッと見積もって50万円を超えていた。保険に入っていたとはいえ、相手の車は国産とはいえ高級車に属し、色々手を加えていた代物。一方的にこちらに非がある以上それ相応の仕打ちは致し方ない… しかし、俺はやっとバイトした金で買った車、そいつが大破した以上財産らしい財産なんかなかった。親に頼ろうと言ってもうちは母子家庭で、女手ひとつでなんとか俺を大学に通わせてくれているし、貯金らしい貯金なんてない。それに頼ったら母は無理して俺のために身を削り金は作ってくれるかもしれないが、そんなことはしてほしくない、なんとかして自力で返さなくちゃ… そう思っていた矢先、俺はこの広告を見つけたのだった…
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