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「おかあさん!おにいちゃん!はやくう~」
見渡す限り一面緑の空間の中で、妹が手を振っている。
果てしなく続く草間は陽の光を浴びて時折キラキラと瞬いた。
大きく息を吸いこむと瑞々しい自然の薫りがした。
遥か前方を走る妹は、久し振りに散歩に連れて行ってもらった犬か猫さながらにはしゃいでいる。
「おいおい、そんなに走るなよ」
佑樹は努めて大きな声を出したが、妹の耳には届いていなかった。
ずっと、「はやくはやく」と繰り返している。
「母さん、早く行こう」
隣を歩く母に声を掛け、手を握った。
母は微笑んで、「ええ」と短く応え、駆け出す。
母の手は佑樹の方から握り返さなくとも、放れる気はしなかった。
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