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2人は殆ど家を出る事はなかった。 佑樹は最初の頃こそ時折外に買い物に出かけたりもしていたが、じき出掛ける事はなくなった。 日奈子にいたっては部屋からすら殆ど出る事がなかった、というよりも、出させてもらえなかった。 始めの頃は「トイレに行きたい」と言い出せずに度々部屋の中でおもらしをしていたが、その度に佑樹に肉体的苦痛を与えられた影響もあって、ようやくそのくらいの事は口に出せるようになり、部屋でおもらしする事はなくなった。 しかし日奈子が利用できるのは2階のトイレのみで、しかも佑樹が狭いトイレの中にまで入ってきて、じっと見詰められている状況で用を足さなければならなかった。 慣れない内はずっと我慢していたにも関わらず中々用を足せないこともしばしばだったが、慣れというのは恐ろしいもので、そんな事を繰り返している内に日奈子は見詰められていても苦もなく用を足せるようになっていった。 お風呂などは当然使えなかったが、週に1回くらいは佑樹が濡れタオルを使って日奈子の体を丹念に拭いてくれた。 しかしその佑樹自身は殆ど風呂に入ることもなければ体を拭く事もなく、体からは異臭を放っていたが、ずっと臭い環境の中にいるとそれが逆に普通のことになり、全く気にならなくなった。 もうどのくらいの月日が流れただろう。 日奈子には知る由もなかったが、日に日に痩せ細っていく体、確実に衰えていっている手足、そしてそれでも必死に成長を試みる体から何かを感じ取っていた。 佑樹はテレビを観ている。 比較的恵まれていたはずの容姿はすっかりなりを潜めていた。 薄汚れた顔、手入れされる事無く汚く伸びた髪、顔の周りを鬱蒼と生い茂る髭、何日も替えていないシャツとズボン。 ブラウン管を眺めている筈の瞳も、何処か焦点が合っていない。 テレビの中ではお笑い芸人が馬鹿騒ぎをしていたが、佑樹の表情は全く変わらない。 日奈子はそんな佑樹をじっと見ていた。
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