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***** いつも通りの薄暗いバーは、賑わうというよりむしろひっそりと酒を愛するものが楽しめる雰囲気を醸し出していた。 常連客の顔は見覚えがあるが親しく話すほどの顔見知りでもない。大体、あんなライブをやっていることすら知らなかったのだ。まだこのバーの常連とは言えないのかもしれない。 ざっと辺りを見回して、それらしき人物が見当たらないのを確認すると、いつものカウンター席の右端に陣取った。 はぁ。 ため息にならないため息を吐いて、紗耶香は、いつものようにマティーニにしようか、それともうんと趣旨替えして冒険してみようかと考えていた。 実は、ここのところ通い詰めたせいでいくら好きなマティーニとはいえど、飽きを覚えてしまっている。元々、カクテルより、焼酎やビールの方が性に合ってるせいもあるのだろう。
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