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そういって切られた。なんでよりによってあのバーなのだろう。
付き合っている時は、あまり行きたがらなかったくせに、どういう風の吹き回しなのだろう。
携帯を閉じると、着替えをさっさとすませた。
*
バーの中は、いつもと変わらずだ。というより、カウンターに見慣れたスーツを見つけて、紗耶香一人陰欝な空気に浸っていた。
入ってきた紗耶香に気がついたマスターはすこし苦笑して、頑張ってとつぶやいたように見えた。紗耶香も同じように答え、スーツ姿のあの人の元に近づいて行く。
「待った?」
「いいや。何飲む?」
「いらない」
いつもは、喜んで頼む紗耶香が頼まなかったのがよほどだったのか、徳田は、珍しいといった。
だが、酔っ払ってまで、話し合う内容は出てこないつもりだった。
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