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唄い終わって駆け寄ってきた港は、すがすがしすぎる程の顔をしていた。
顔を背けたくなるような存在感。
彼との歳の差を考えれば、紗耶香はここで決断を誤るわけにはいかない。
惹かれてしまっている事実を含めても、それに手をだすべきではない。ましてや紗耶香は、今日、正確にはきのうだが、恋人に振られたばかりの人間である。普通なら惚れた腫れたの話し所ではないはずなのでなる。
好物件の元カレに振られた悲しみにうちのめされていた紗耶香はもういない。
彼がくれなかったものを、港はくれそうな予感がする。
「どうでしたか?」
あんなにも歌ったにも関わらず息を切らすことなく、紗耶香の横に座った港の顔をみる。
意見を求めるような子犬のような眼差し。
「凄く、上手いね。」
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