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「全員、男だろ」
気付いた事実を、和哉はごくごく普通のことのように、サラッと告げた。
「ボーイはもちろん男。バーテンダーも男。そして来る客も全員男……ここは、そういう店なんだよ」
「……」
「驚いた?」
「まぁ、ちょっと」
「……」
「あ、あのさ、今……付き合っている人って、いるのか?」
「いいや。この間、フラれたばっか。お前は?当然付き合ってんだろ」
「……一回も」
「?」
「“あの時”から一回も、付き合ったことはない」
「はあ!?」
そこで初めて、和哉が徹の方を向いた。
「一回もって……。“あの時”からって……」
「うん……」
「誰か、好きになった奴とかいなかったのか」
「気になった人は何人かいたよ」
「付き合わなかったのか」
「それ以前の問題」
「何もしなかったのか」
「……」
「……」
「――……分からないんだ」
「……」
「分からないんだよっ」
ぐいと徹はウィスキーを飲み干した。
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