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「今も、女には興味が持てないんだ。気付くと男の方ばかり見ている。付き合うとか、あれこれ考えるさ。でも、いつもそこまでなんだ。そこで俺は終わってしまうんだ」
「……」
「俺、何なんだろうな。やっぱり女が好きなのかな?それとも男なのかな。俺、未だに自分が分からないんだよ。
女が好きなのか、男が好きなのか……人を好きになるってことが……――」
「……ウソは、良くないな」
「!?」
「見苦しいぜ」
「ど、どうしてそんなこと言うんだよ」
「分かってるくせに」
「……」
「分かってるんだろ。本当はどっちかなんて」
「……」
「“臆病者”……それも本人が一番良く知っている」
「……」
「なあ」
「……」
「教えてやろうか」
「……」
「お前に足りないもの」
和哉が静かにグラスを置いた。そして手を伸ばし、指先で徹の顎を捕らえると、
「教えてやるよ」
彼の唇が徹のそれに、重なったのだった。
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