1.

2/4
前へ
/29ページ
次へ
 「――では、皆が集まった今日この日に、かんぱーい!」 「かんぱーいっ」  卒業してから七年。初めて開かれた高校のクラス同窓会。 「久しぶりだな」 「えー、結婚したの!?」 「元気だったかよっ」  当時の男子生徒、女子生徒は、すっかりいい大人になっていた。 「お前変わってないな」 「若いって言葉が段々離れていくよねぇ」  無論、歳は重ねているものの、例外的にたいした風貌の変化がない者もいるが。 「……」  そんな中で、桜井徹(さくらいとおる)は誰と話すこともなく一人、壁ぎわにたたずみ、目の前の光景をただじっと静観していた。  イタリアンレストランでの、立食式の同窓会。設けられている椅子に座り、話し込んでいる者もいれば、忙(せわ)しなく動き回っている者もいる。  一人でいるのは、徹くらいのものだった。 「桜井!元気してたかっ」  突然、声をかけられた。 「……門脇」  徹は冷静に、声のした方へ視線を向ける。男が一人歩み寄ってきた。 「久しぶりだなっ」 「……」  男は、にかっと、はにかんだ。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加