99人が本棚に入れています
本棚に追加
「――では、皆が集まった今日この日に、かんぱーい!」
「かんぱーいっ」
卒業してから七年。初めて開かれた高校のクラス同窓会。
「久しぶりだな」
「えー、結婚したの!?」
「元気だったかよっ」
当時の男子生徒、女子生徒は、すっかりいい大人になっていた。
「お前変わってないな」
「若いって言葉が段々離れていくよねぇ」
無論、歳は重ねているものの、例外的にたいした風貌の変化がない者もいるが。
「……」
そんな中で、桜井徹(さくらいとおる)は誰と話すこともなく一人、壁ぎわにたたずみ、目の前の光景をただじっと静観していた。
イタリアンレストランでの、立食式の同窓会。設けられている椅子に座り、話し込んでいる者もいれば、忙(せわ)しなく動き回っている者もいる。
一人でいるのは、徹くらいのものだった。
「桜井!元気してたかっ」
突然、声をかけられた。
「……門脇」
徹は冷静に、声のした方へ視線を向ける。男が一人歩み寄ってきた。
「久しぶりだなっ」
「……」
男は、にかっと、はにかんだ。
最初のコメントを投稿しよう!