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「でも、あの一度は大きかった。きっと……俺たちにはどこか、お互いを感じる何かがあったんだろうな。それがあの一度きりの、たった数時間の会話でより深く感じられるようになった。 だから今日。久しぶりに会ったというのに、お前のこと、俺には分かったよ」 「……」 「俺は、その壁はさっさと乗り越えてしまったが、お前にとっては決して、安易なものではないんだな。ま、さっさと乗り越えてはしまったが、俺にとっても当初は、悩んだことの一つだったけどね」 「……ごめん」  頬に置かれている和哉の手に、徹はそっと、自分のそれを重ねた。 「ごめん。俺はこんなにも、浅ましい人間なんだ。こんな形でお前を利用してしまって、本当、ごめん……」 「いやいやこちらこそ。初めての相手に俺を選んでくれて光栄ですよ」 「ごめん……」  ただ、申し訳なかった。 「桜井」  和哉がキスしてきた。
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