『慾』～yoku

１．

「今何し――」
「幸信」
　徹は、はぁと溜め息をついた。
「……お前とは、先週会ったばかりだろ」
「だってよ～」
　門脇幸信（かどわきゆきのぶ）は途端に、眉を八の字に垂れ下げて、
「せっかくの同窓会なのに、お前も皆と一緒にいればいいじゃん。何で一人でいるんだよぅ」
　ブーと、不満に口を尖らせた。
「俺は、騒がしいのは苦手なの！」
「え～、昔は結構ばか騒ぎするの好きだったくせに。先週会った時だって、酔っ払って路上で叫んでたじゃないか」
「……え。さ、叫んでた？」
「思いきり」
「何て」
「“俺のバカヤロウ”って。どうしてって聞いても、ひたすらバカヤロウって叫び続けていた」
「……」
「騒がしいの、好きだろう？」
「……」
「な？」
「……まあ、な……」
「じゃ、あっち――」
「なぁ」
「？」
「今日、結局の所どのくらい集まったんだ？見るかぎり結構集まったよな」