99人が本棚に入れています
本棚に追加
「バーカ。一流ブランドの社員が“フツーのサラリーマン”なわけあるか。ここの会社の平均年収は、お前のとこの三倍はあるぞ」
「げっ」
幸信の顔色が、たちまち青くなった。
「まず男女とも容姿端麗であること。学歴は問わないが、現場力や応用力をかなり求められる、相当な個人能力が高くないと入ることの出来ない会社だよ」
「池ちゃんて、凄いんだね……」
「そうでもないよ」
次元の違いを理解したのだろう。先程とは明らかに異なる、うっとりとした眼差しを向けてくる幸信を、さりげない台詞で受け流すと、
「随分俺のこと褒めてくれるんだな」
和哉の目線が徹に定まった。
「別に、事実を言ったまでだよ……」
自分を見つめてくる、その瞳を直視することが出来なくて、徹はふいと横を向く。
「桜井」
「……」
「お前、ひょっとして体調悪いんじゃないのか?」
「え……」
瞬間、徹の額に和哉の手がのった。
「やっぱり」
「……??あ、あの――」
最初のコメントを投稿しよう!