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到着したのは単身向けの綺麗なアパートだった。
部屋に上がるのは少し気が引けたので、玄関前で待つつもりだった。
「あれ?係長、入らないんですか?」
「ちゃんと掃除はしてますよ、安心して下さい」
断る理由を探す間に、スリッパを出されていた。
「お…お邪魔します」
久しぶりに男性の部屋に入った。
どれくらいぶりだろう。
この前に別れた彼氏の家には1回も行って無かったっけ。その前はいつ?
もしかして、高校生の頃以来かも…。
シンプルな彼の部屋は、不思議な位落ち着いた。
あまりキョロキョロしない様に、部屋を見渡した。
ライトグレーのカーテンに、同色のカバーを纏ったベッド。
黒いソファは低反発で心地良い。
ほんの少しのサンダルウッドの香りと、テーブルやラグ、テレビ台の色の統一で、とても男性の一人暮しとは思えない。
1DKのキッチンから、彼がコーヒーを持って来た。
「そんな気を遣わないでいいのに。」
インスタントではなく、きちんと煎れたコーヒーに、心遣いを感じた。
砂糖を入れた時。
「係長…」
突然真剣な顔をされた。
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