部屋へ

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男の人に抱きしめられる、それは今までは嫌悪感を抱くものだった。 今は、嫌では無い。 むしろ、少し心地良い。 サンダルウッドの香りと、彼の香水と、髪の香り。 「僕が仕事で係長をこえたら、認めて下さい。いや、その時は僕が社内恋愛を許可します。」 彼は一瞬ぎゅっ。と力を込めて私を抱きしめた後、そっと離れた。 「係長は自分より仕事出来る男が好きって言われてましたもんね。」 私が同僚や部下からの相談にのっている時に言っていた言葉だった。 いつもの顔に戻った彼は、 「でも…係長、僕を怒らないって事は、頑張っていいって事ですよね?」 と、少し意地悪な顔で笑った。 その顔が、また私の心臓をきゅうっと縮ませた。
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