仕度ノ一「許したくない、ワルがいる」

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紅平は簪を玄竜に突き付けた。怒りに震えながら言う。 「どうでえ、とっつぁん!銀細工のいい品だ。高く売れるぜ?三人やっても釣りがくらあ!」 小桃は簪を紅平から取り上げ、懐から小判を取り出した。 「とりあえずあたいが五両で買っとくよ。も少し高く売れたらあたいの取り分に加えさせてもらうよ」 紅平は小桃に礼を言った。 「すまねえ小桃。さてとっつぁん、合わせて八両と二分と八百文だぜ?」 黄次郎が言った。 「島田は腕がたつから三両。柴倉が二両。喜島屋は一両と二分と見ました」 玄竜は、つるりと頭を撫でながら言った。 「俺が喜島屋をやるか。紅平、金を分けてくれ」 蒼乃助は、 「私はその島田とやらを斬ってみたい」 と言った。紅平はみつから預かった巾着を取り出し、みつの亡骸の隣りに金をぶちまける。 各々仕度料を手にした。 玄竜は黄次郎に言った。 「柴倉と島田の野郎をおびき出すぞ。場所は…この寺にするか」 寺の荒れた庭では細い月が、桜を照らしていた。
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