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夜月は部屋に篭(こも)っていた。
別に朝陽にキスされそうになったからじゃなくて、自分の変な声を聞かれてしまったから。
夜月は話せないわけじゃなくて、常に重度の風邪声みたいな感じ。
(白石くん……私のあんな声聞いて、嫌いになったよね)
朝陽が帰ってから一時間ほどが経過している。
母親が自分のことを呼んでいた気もするが、今は部屋に痛い。
(あの時の男の子)
昔、犬のぬいぐるみをくれた男の子。
(今、何してるのかな)
そんなことを考えても仕方ないというのに、どうしても考えてしまう自分がいる。
(もう、いいよね)
過去のことなど忘れて、今は――
(でも白石くん……ダメ。せっかく好きになったんだもん。私と似てるし、わかってくれるはず)
そう思い、夜月は母親の部屋に向かった。
「あ、カグヤちゃん。すごく大切な話があるの。そこに座って」
頷いて、夜月はベッドの横にある椅子に座った。
「ずっと隠していたんだけど、あなたは……」
母親は考え、やはり止めた。
「ううん。何でもないわ」
『本当に何でもないの?』
メモ帳に書いて見せるも、母親はえぇと頷いて何でもないと言った。
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