0人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
お腹を抱えて笑う田村。
「まぁちょっと聞いてみるね」
笑うのを急に抑え、田村はそんなことを言いだした。
「お~い、福ちゃ~ん」
田村が呼びかけると、福圓はこちらに目を向けた。
「お弁当は?」
田村がそう尋ねると、福圓はふるふると首を左右に振った。
「買ってこないの?」
弁当がないなら購買で買えばいいだけだ。
と、福圓は胸ポケットからメモ帳らしきものを取り出し、それに何かを書きはじめた。
俺の位置からは見えなかったが、福圓は何かを書いたメモ帳を田村に見せる。
「ふ~ん」
田村はしばらく考え込んだあと、
「私たちの分けるけど、一緒に食べる?」
福圓はこくりと頷き、本を机の中に閉まって、机を移動させてくる。
(えっ)
ドキリとしてしまった。
福圓は俺と田村の横に机をくっつけてきたのだ。
「そういやさ」
と今まで黙っていた小野が唐突に、
「白石と福圓って双子?」
などとわけのわからんことを聞いてきた。
「ちげぇよ。てか俺、福圓と会ったのは今日が初めてだっての」
言い、そういや今は犬のぬいぐるみを渡すチャンスなんじゃ?と思い、鞄から犬のぬいぐるみを取り出す。
「ほら福圓、忘れ物」
すると福圓はガバっと奪いとり、犬のぬいぐるみを抱きしめた。
(よっぽど大切なものだったのか……)
それならもっと早く渡しているべきだった。
最初のコメントを投稿しよう!