夜月-1

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「ごめんねカグヤちゃん。ママ、一緒に行けそうにないわ」 ベッドに横たわっている母親を見つめながら、その娘・福圓夜月は首をふるふると左右に振った。 「カグヤちゃんのせっかくの入学式なのにね」 母親はさも残念そうにはぁっとため息をつく。 と、扉を開けて何者かが入ってきた。 「あなた」 カグヤの父親であった。 だがカグヤは母親に手を振って『いってきます』と表し、部屋から出た。 そして自室へと向かうため、廊下を歩いて階段へ。2階に下りて廊下を進む。 (パパなんてどうせ、私のことなんか……) やがて自室につき、宝物である犬のぬいぐるみを手に取る。 (…………) 昔、近所の男の子にもらった大切なもの。 ――これ、ママに買ってもらったけど君にあげる。 その男の子はそんなことを言っていたが、それ以来会っていない。 いや、会わせてもらってない。 犬のぬいぐるみを抱きしめる。 (あの男の子……今頃どうしてるかな……) お互い、名前も知らなければどこに住んでいるかさえもわからない。 本棚から本を取り、それを鞄に入れてチャックを閉める。 (まだちょっと早いけど、家にいたらパパがうるさいし、もう行こっと) 思い、カグヤは部屋から出た。 「なんだカグヤ。もう行くのか」
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