0人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
カグヤはビクっと身を震わせ、自らの父親を見た。
こくりと頷く。
「そうかそうか。なら、行ってきなさい」
カグヤは父親には手も振らず、廊下を歩いていく。
「ふん」
と、父親が、さもカグヤを蔑(さげす)んだように鼻を鳴らした気がした。
カグヤは屋敷を出て、駅へと向かった。
(あ……)
その途中、あの男の子と出会った公園を通りかかった。
公園にある時計を見ると、まだ登校時刻には時間はたっぷりあった。なのでカグヤは公園に入り、膝を抱えてベンチに座る。
すぅぅっと息を吸ったあと、はぁぁっと吐き出し、鞄から本を取り出す。
(…………)
そしてそれを黙々と読んでいると、声が聞こえた気がした。
だがその声はすぐに聞こえなくなり、はっとページからして30分は読んでいたことに気付き、立ち上がって公園を出て行く。
(タクシー使おっかな)
駅まではまだ遠い。それならタクシーに乗ったほうが早く、しかも楽なのである。
(でもそう簡単にタクシーが……)
捕まるわけないと思って後ろを振り向くと、空車と表示されてるタクシーがこちらに向かってきていた。
なぜだか反射的に手を上げると、当然だがタクシーはカグヤの横で停まった。
「ん、嬢ちゃん、どこまで」
最初のコメントを投稿しよう!