夜月-1

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カグヤはビクっと身を震わせ、自らの父親を見た。 こくりと頷く。 「そうかそうか。なら、行ってきなさい」 カグヤは父親には手も振らず、廊下を歩いていく。 「ふん」 と、父親が、さもカグヤを蔑(さげす)んだように鼻を鳴らした気がした。 カグヤは屋敷を出て、駅へと向かった。 (あ……) その途中、あの男の子と出会った公園を通りかかった。 公園にある時計を見ると、まだ登校時刻には時間はたっぷりあった。なのでカグヤは公園に入り、膝を抱えてベンチに座る。 すぅぅっと息を吸ったあと、はぁぁっと吐き出し、鞄から本を取り出す。 (…………) そしてそれを黙々と読んでいると、声が聞こえた気がした。 だがその声はすぐに聞こえなくなり、はっとページからして30分は読んでいたことに気付き、立ち上がって公園を出て行く。 (タクシー使おっかな) 駅まではまだ遠い。それならタクシーに乗ったほうが早く、しかも楽なのである。 (でもそう簡単にタクシーが……) 捕まるわけないと思って後ろを振り向くと、空車と表示されてるタクシーがこちらに向かってきていた。 なぜだか反射的に手を上げると、当然だがタクシーはカグヤの横で停まった。 「ん、嬢ちゃん、どこまで」
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