夜月-1

4/6

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
カグヤはメモ帳を取り出し、そこに『桃城学園の近くまで』と書いてドライバーに見せた。 「はいよ」 タクシーが走りだす。 「嬢ちゃん、しゃべれないのかい?」 ミラーをチラっと見ながらドライバーは聞いてきた。 こくりとカグヤは頷く。 「そうか。大変だね」 それきり話しかけてこなかったので、カグヤは窓の外を眺めながら目的地につくのを待った。   お金を払い、タクシーを降りる。 (お昼のお金なくなっちゃった) 思い、学校に入っていく。 「やっほ~福ちゃ~ん」 同じ中学だった田村さんが挨拶をしてきたので、こくりと頷いて挨拶をし返す。 クラスは一組だった。 席は真ん中の1番後ろ、出席番号順だ。 座り、本を読む。 「…………」 しばらく読んでいると、担任の先生が入ってきた。 「よし、じゃあこれから入学式だから、廊下に出て並べ~」 中学校じゃあるまいし、わざわざ並ばなくてもいいのでは?と思ったけど、やはり並ぶらしい。 入学式が終わり、自己紹介の時間になった。 「…………」 だけど特に興味もないので、黙々と本を読む。 と、聞いたことがあるような声が聞こえてきたので、顔を上げて教壇のほうを見ると、左眼に眼帯をした黄土色の髪の美少年がいた。 「…………」 でも知らない顔なのですぐに読書を再開する。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加