夜月-1

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(どうして白石くんが?) 「ほら福圓、忘れ物」 白石くんは私の宝物である犬のぬいぐるみを私に渡した。 カグヤはぎゅっと犬のぬいぐるみを抱きしめる。 (よかった。これがなかったら、私は……) と、白石くんがお弁当を食べ終わり、席を立つ。 「どこ行くの?」 「購買」 「ひゅ~、優しいね~」 白石くんは教室から出ていった。 (購買?優しい?) そしてカグヤは意味を察し、立ち上がる。 「福ちゃん、どうしたの?」 田村さんの言葉を無視して私は教室を飛び出した。 宝物を拾ってくれただけじゃなく、お昼ご飯までご馳走されては仲良くなってしまう。 (そんなの、嫌……!) やがて階段の所で白石くんを見つけた。 「?」 ぼーっと窓の外を見つめていた。 その表情はどこか悲しげだった。 近づき、顔を覗き込む。 「……ん?ってうわぁ福圓!?な、なんだ?」 白石くんは大袈裟に驚いて私から離れた。 (嫌われるのは慣れてるから大丈夫) 自身を落ち着かせ、白石くんを見る。 「あ、そっか。昼飯ぐらい、選びたいもんな」 ふるふる、とカグヤは首を左右に振った。
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