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福圓に昼飯を奢(おご)ると、福圓はメモ帳に『お礼するから今夜家に来て』などと大胆なことを書きやがった。
「いやいきなり家はっ、……てか、ごめん。今日はダメだった。用事あんだ」
すると福圓はメモ帳に何かを書く。
『じゃあ明日は?』
明日は休みだろうに。
(待て……休み?)
これはいい機会ではなかろうか。
「よし福圓。明日デートしよう」
福圓は無表情のままその場に硬直した。
「朝迎えに行っから、住所教えてくれる?」
しかし福圓はまだ固まっている。
「もしも~し。福圓、大丈夫か?」
やっとのことで福圓は目をパチクリさせ、メモ帳に住所を書いてそれを破り、俺に渡して福圓は走っていった。
「明日は福圓とデートか」
ん?そういやなんでデートに誘ったんだ?
(俺、福圓のこと好きなのかな)
なんて思いつつ、朝陽は教室へと戻った。
5時限目、帰りのHR(ホームルーム)が終わり、放課後になった。
「ん?」
帰ろうと思ったが、福圓の姿が視界に入った。
「福圓」
声をかけると、福圓は振り向いてくれた。
「帰らないのか?」
福圓はこくりと頷いた。
「なんで?」
福圓はメモ帳に文字を書いてそれを俺に見せる。
『お金ないから』
「あのな……じゃあどうやってあの公園から学校まで、遅刻せずに済んだんだ?」
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