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『タクシー乗った。お昼代で』
どうやらタクシーに乗って学校に来たらしいが、そのせいで昼飯が買えなくなったらしい。
「電車代ぐらい出してやるよ」
福圓はふるふると首を左右に振る。
「遠慮しなくていいんだぜ?友だちだろ?」
少し話しただけだが、それだけで十分友だちだろう。
だが福圓は思わぬ行動に出た。
「!?」
朝陽に抱きついたのだ。しかも泣きながら。
「福……圓……?」
そっと福圓の頭に手を乗せる。なんとなく撫でてみる。
「どうした?何かあったのか?」
福圓はゆっくり首を左右に振り、俺から体を離して涙を拭(ぬぐ)う。
「…………」
涙を拭っている福圓は、普段よりも美しく綺麗だった。涙が似合う女の子とでもいうのだろうか。
「家まで送ってく」
福圓はこくりと頷いた。
「なあ福圓」
電車に揺られながら朝陽は福圓に尋ねた。
「手話とかって習わないの?」
こくりと福圓は頷く。
「ふ~ん」
話せないのならばせめて手話を覚えるべきではないか、と朝陽は考えた。
(メモ帳よりは話してるって感じがするだろうし)
にしても、他の乗客が自分たちのことをじろじろと見ていてあまりいい気分じゃない。
(ま、当然か)
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