0人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
自分も福圓も髪は黄土色だし、さらに俺は眼帯をしていて、福圓はかなりの美少女だ。
(見ないほうがおかしいよな)
福圓はそんな視線も気にせず、というか気付きもせずに本を読んでいる。
「…………」
学校で見せたあの涙は一体なんだったのだろうか。
(ま、考えるより聞いたほうが早いよな)
だが聞くことはせずに窓の外を見る。
目的の駅が見えてきた。
てくてく。
二人は公園の前で足を止めた。
「…………」
二人が初めて出会った場所。あれからまだ半日も経っていない。
――あなたは私たちの本当の息子じゃないのよ。
(ん?)
なんで今、今朝母さんが言ったことを思い出したんだ?
「福圓、行くぞ」
福圓はこくりと頷き、二人は公園の前を通り過ぎた。
「うっわぁ……」
やがて福圓に案内されてついた所は、大きな屋敷の前だった。
「えっと……ここが福圓の家?」
福圓はこくりと頷き、朝陽の腕を握って屋敷に入ろうとする。
「うおいおい、なんだよ福圓。俺は入らないぞっ」
だが福圓は朝陽の腕を離さない。
「ふ、福圓!ま、まずいって!それに俺にも用が……」
朝陽は動揺しているが、もちろん福圓は動揺などしていない。誘ってるのは福圓なので当たり前だが。
最初のコメントを投稿しよう!