0人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「あ、えっと……」
――妹がいるって言ってなかった?
――あなたは私たちの本当の息子じゃないのよ。
(こんなときに)
なぜそんな言葉を思い出しているのか、自分は。
「なぁ福圓」
頭の中からその言葉と先ほど見た福圓の姿を追い出して、朝陽は福圓に尋ねた。
「?」
「福圓って、一人っ子?」
福圓は不思議がりながらもこくりと頷いた。
「あ、はは。そうだよな……。ごめん、変なこと聞いて」
一瞬、思ってしまった。
福圓が妹ならいい、と。
「…………」
朝陽は福圓の目を見つめる。
「…………」
福圓も頬を染めながら、朝陽の目を見つめる。
(やっぱり可愛い……)
そして朝陽は福圓を抱きしめた。
「!?」
さらに、福圓の唇を奪おうとして――
「い゛や゛!!」
「え――?」
福圓に突き飛ばされた。
「福圓……?お前、しゃべれるのか?」
ガラガラ声ではあったが、確かに今、福圓は声を発した。
「あ゛……」
「福――」
福圓は泣きながら朝陽から逃げて行った。
「……なにしてんだろ、俺」
とりあえずもう帰ろう。もちろん福圓に謝ってから。
福圓の母親の部屋に戻ってみる。
「あら、どうしたの?」
「あ、あの……福圓、じゃなくてカグヤさん来ませんでした?」
最初のコメントを投稿しよう!