朝陽-2

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「いえ。来ていないけど、どうしたの?」 聞かれて朝陽は口篭(くちごも)る。 「あの……その……」 キスをしようとして嫌われた、なんて福圓の母親にどう説明しろというのか。 ――妹がいるって言ってなかった? 「…………」 気になることを思い出し、朝陽はそれを尋ねた。 「それより、どうしてあんなこと聞いたんですか?」 「あんなこと?」 「妹がいるって言ってなかったか、と聞いてきましたよね」 母親は俯き、何も答えない。 「……もしかして、俺はあなたと関わりがあるんじゃないですか?」 びくっとして母親は顔を上げた。 どうやら朝陽の考えは的中していたようだ。 「俺は今の親の本当の息子じゃない。そして俺は昔、あなたと会ったことがある気がするんです」 そう。つまり福圓の母親であるこの女性は―― 「あなたは俺の本当の母親ですか?」 朝陽と母親の視線が交差する。 しばらく黙り込んでいた母親だが、やがて話をすり替えた。 「……夜月と何があったかわからないけど、今日はもう帰りなさい」 「なっ……」 どうして答えてくれないのか、と朝陽は叫びたかった。 「…………」 しかし、叫ばなかった。 「……福圓に、ごめん、と言っておいて下さい」 それだけ伝言し、朝陽は福圓の屋敷から出ていった。
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