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「ただいま……」
家に帰ると、母親が居間にあるテーブルの前で正座していた。
「遅かったわね」
普段と変わらぬ口調。
「知り合いを家まで送ってた」
「そう。早く座りなさい」
「……福圓夜月って娘(こ)」
すると母親は目を見開いた。
「やっぱり福圓は俺と関係してるんだろ?」
「……早く、座りなさい」
仕方ないので母親の向かいに座り、改めて尋ねた。
「福圓は俺とどういう関係だ?」
「福圓はあなたの本当の家族よ」
本当の家族……あの、福圓が。
「夜月ちゃんはあなたの実の妹。……口、きけなかったでしょ」
ああ、と頷く。
福圓の母親が言っていたので何となく予想はついていたが、やっぱり福圓は俺の妹だったのか。
「俺も福圓――」
実の妹のことを福圓、なんて呼ぶのはおかしいと思い、朝陽は呼び方を変えた。
「俺と夜月は、どうして生れつき目が見えなかったり、口がきけなかったりするんだ」
「それは……あなたの本当の父親が、あなたがたがまだお腹の中にいる頃――」
母親に暴力を振るっていた……?
「その……父親は……?」
「さあ……。別れたはずだけど、それしか……」
母親は申し訳なさそうに俯く。
どうして人は、こういう時に俯くのだろうか。
夜月の――朝陽の本当の母親も、このことを尋ねたら俯いていた。
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