夜月-2

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夜月は部屋に篭(こも)っていた。 別に朝陽にキスされそうになったからじゃなくて、自分の変な声を聞かれてしまったから。 夜月は話せないわけじゃなくて、常に重度の風邪声みたいな感じ。 (白石くん……私のあんな声聞いて、嫌いになったよね) 朝陽が帰ってから一時間ほどが経過している。 母親が自分のことを呼んでいた気もするが、今は部屋に痛い。 (あの時の男の子) 昔、犬のぬいぐるみをくれた男の子。 (今、何してるのかな) そんなことを考えても仕方ないというのに、どうしても考えてしまう自分がいる。 (もう、いいよね) 過去のことなど忘れて、今は―― (でも白石くん……ダメ。せっかく好きになったんだもん。私と似てるし、わかってくれるはず) そう思い、夜月は母親の部屋に向かった。 「あ、カグヤちゃん。すごく大切な話があるの。そこに座って」 頷いて、夜月はベッドの横にある椅子に座った。 「ずっと隠していたんだけど、あなたは……」 母親は考え、やはり止めた。 「ううん。何でもないわ」 『本当に何でもないの?』 メモ帳に書いて見せるも、母親はえぇと頷いて何でもないと言った。
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