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昼。俺は鞄(かばん)から、今朝母さんに渡された弁当を取り出す。
チラっと福圓のほうを見ると、机に鞄を置いて何やら探している。
(……あ)
もしかして犬のぬいぐるみを探しているのかもしれない。
「あ、なぁなぁ白石だっけ?一緒に飯食わねぇ?」
と、前の席の男に言われた。
(まぁまさかぬいぐるみに入ってた飴玉が昼飯ってわけでもないだろうし、放課後でいいか)
そう思い、前の席の男――名札には『小野』と書いてあった――と机をくっつける。
「あ~、私も~」
「私も私も~」
隣の席の女子――田村――と、その前の席の女子――周防(すおう)――が勝手に机をくっつけてくる。
「ねぇねぇ、白石くんって彼女いるの?」
といきなり質問してきたのは周防。
「んにゃ、いない。周防さんは?」
「周防でいいよ~。前はいたんだけど、フラれちゃって」
ペロっと舌を出す。
「ところで白石くん、授業中寝てたけど大丈夫?」
と心配そうに聞いてきたのは田村。
「大丈夫って、なにが?」
「宿題」
「へ?宿題?」
初日に宿題なんて出るものなのだろうか。さすが名門。
「お前な~。つーか初日から居眠りなんかして、泉堂に目ぇつけられるぞ」
と心配してるのかしてないのかわからないが、そう言ってきたのは小野。
「せんどう?そんなやつクラスにいたっけ?」
いたっけ?も何も自己紹介を聞いていなかったのだからいたとしても記憶にはない朝陽であった。
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