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二人は学校へ着くと顔を見合わせて頷いた。
既に帰宅した生徒の居ない学校が何時もより大きく見える。
手をしっかり繋いだ二人は職員室へ向かった。
「青木さん!良かった…無事で…」
担任が安堵の溜め息を吐いた。
「先生…ご迷惑をお掛けしました。私も…私の両親も…本当にごめんなさい!」
頭を深く下げた花胡に担任は驚いた。
髪が短いからではない。
まるで別人だ。
「良いのよ青木さん。でも…青木さんのご両親が…」
「厄介な親ですいません。私がちゃんと言います」
しっかりした口調。
六月が教えてくれた事。
『生きてる事に自信持て。生まれたからにはお前は誰のモノでもない。お前のモノだ』
でもね、一つ言わせて?
私は六月のモノになりたい。
足はどんどん前に進む。
不思議なくらい落ち着いてる…私ってこんなに強かったかな?
「開けるわよ?」
担任が来賓室のドアを開けた。
「…花胡!」
両親は複雑な表情をして花胡を見つめる。
「皆さんには本当に迷惑をお掛けしました。私は花之木君のお陰で生きています。心配して下さってありがとうございました」
頭を下げて謝る花胡に両親は激怒した。
心配したのはこっちだぞ!
そうよ!謝るならまず私達でしょ!?
男の処で何をしていたんだ!
私達が心配してたのにアンタは何をしてたのよ!
…馬鹿みたい…。
自分達に落ち度なんてないんだ…この人達は…。
助けてくれた六月にお礼さえ言わないで罵って私が生きてる事さえ喜ばない。
私は一体この人達に何を求めてたのかな?
「ごめんなさい………これで満足ですか?気が済みましたか?何でも世間体を気にする貴方達の子供に生まれた事が恥ずかしいです。こう云う時だけ仲が良いんですね?あれほど離婚だの浮気だの言って喧嘩してたくせに…」
花胡はそう言い放った。
両親は慌てて弁解したり、嘘つき呼ばわりしたりと花胡に散々な事を言う。
「お前は育ててやった恩を仇で返すのか!何て奴だ!」
「恥を掻かせて楽しいの!?昔から扱い難い子だと思ったけど最悪だわ!!」
六月はもう呆れていた。
馬鹿かコイツ等…。
「失礼します」
ドアが開いて教頭から促されて入って来た二人に皆の視線が集中した。
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