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「海なんて久しぶりだなぁ…ずっとあの部屋に閉じ籠ってたからかな?」
背伸びをして潮風を浴びる。
「まぁたまには良いかもしれませんね。博士は本の虫だから」
スラリとした身体に綺麗な顔をした女性が黒いビキニにパーカーを羽織っている。
「早百合(サユリ)さん、付き合ってくれてありがとう」
紀藤は微笑むと早百合も微笑む。
絵になる二人だ。
「それにしても…若い子達ばっかりですね。学校か何かの団体かしら?」
「近くに施設があるからじゃないかな?」
楽しそうに遊ぶ人の中にポツンと外れた所に花柄のビキニを着た女の子が座っていた。
「…昭ちゃん?」
「昭!遊ぼうぜぇ」
「ウザイウザイウザイウザイウザイ」
颯太にこれ以上関わらない様にする昭は立ち上がりさっさと違う場所へ移動する。
「あ!昭~ウチ等と遊ぼうよ~」
隣のクラスで1年の時に一緒だった亜衣が誘う。
「ごめ~ん。私泳げないし海が苦手なんだ」
そう断った。
昭は本当に泳げない。
だから海が苦手なのだ。
「俺が教えてやるって!」
颯太がしつこく昭を誘う。
いい加減にしろよ!このチャラ男が!
「あぁ!やっぱり昭ちゃんだ」
振り返ったらまさかの偶然だった。
周りの女子が騒いで皆こっちを見ている。
「紀藤さん!」
そして紀藤の隣に居る綺麗な人が昭にお辞儀をした。
「お話は伺ってました。花之木博士の娘さんですよね?私、志賀早百合と言います。紀藤博士の助手…みたいな感じです」
「はじめまして。花之木昭です」
昭もお辞儀をした。
本当に綺麗な人だなぁ…。
「君、嫌がる女の子を無理矢理誘っても、余計嫌われる事を承知でしてるんだね。素晴らしい勇気だ」
紀藤は颯太にそう言った。
つまり「君は嫌われているんだよ?」と言っているのだ。
昭の代弁をしてくれた。
颯太は悔しそうに去って行く。
「ありがとうございます。紀藤さんのお陰で追っ払えました」
「どういたしまして」
紀藤はニッコリ笑う。
「昭ちゃーん!」
昭に手を振って呼ぶ人物はフリフリの水着を着た可愛らしい女の子だ。
「咲…」
「シフォンさんが居るの~!来て来て~」
昭は驚いた。
シフォンが此処に?
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