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昭は急いで咲に着いて行く。
海の中に女子が群れている。
「シフォンさぁーん!昭ちゃん連れて来ましたー!!」
昭は浜辺で海に足を浸けるのが精一杯だった。
人だかりの中から現れたのは本当にシフォンだったから昭は呆然と立ち尽くした。
「咲ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして~」
女子達の痛い視線の中で昭はシフォンを見上げた。
「会いたいなって…思って星にお願いしたんだ…まさか本当に会えるなんて…」
「私もそう思っていた…神谷に感謝しないと」
口に掛かった髪をシフォンは指先で退けた。
「あぁ!昭ちんの彼氏って本当だったんだ!」
班の女子が指差して驚いていた。
「はじめまして。ウチの昭ちゃんがお世話になってます」
そう言って昭の身体を引き寄せる。
嫌な想いをしたんだろ。
潮風に乗ってシフォンの囁きが聞こえた。
昭は何だか泣きたくなった。
「シフォン…ありがと」
皆が居なければ良いのに…。
そうすればキスだって出来る。
「やぁ!シフォン君偶然だね」
満面の笑顔を向ける紀藤の姿にシフォンは驚いた…と云う顔をした。
その後に眉根を寄せて昭を抱き締める。
「こんな所で…偶然ですね紀藤博士」
「君こそ何してるのかな?」
「神谷さんが皆で海に行こうかって誘ってくれたんです」
恐い…なんだろうこの会話…。
別に普通の会話なのに気迫を帯びている様な気がした。
二人は微笑んでいる。
ここに美男子と爽やかイケメンが昭の腕を引っ張ってにこやかに会話をする。
皆が見ている。
「良いよ。気にしないで。昭ちゃんは僕がお相手するから」
「そんな…悪いですよ。そこに綺麗なお連れ様がいるのに。それに昭ちゃんは僕の彼女ですから」
「早百合君なら別に良いよ。君こそ神谷の所に戻らなくて良いのかな?」
「酔っ払いより昭ちゃん重視ですから…」
「君が泳ぎを教えるより、僕が教えてあげた方が良いかと思うよ」
グイグイ引っ張られて昭は混乱した。
何で取り合い?
早百合はその光景に微笑んでいる。
皆が見てるよ…もう勘弁して…。
大きな波が押し寄せて昭は倒れた。
バシャン!
「溺れる~!」
昭は足のつく低い場所でバタバタしている。
シフォンが紀藤に舌を出して昭を抱いて泳いで逃げ出した。
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