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「ぎゃぁぁ!足つかないっ!溺れる!」
シフォンにしがみついて顔を真っ青にしている昭をしっかり抱いて楽しそうに少し笑った。
「昭、海は嫌いか」
「嫌いだから嫌だっつってんの!」
二人は随分沖に来ていた。
皆が見えない。
「戻る~!恐い~!」
「昭は可愛いな」
馬鹿かコイツは!
だが昭は気付いた。
シフォンは海に来た事も泳いだ事もないのに平気でこんな沖まで来られるのが不思議だ。
「昭、C5が操作している。私が沈まない様に重力をなくして水の重量を増やしている。だから大丈夫だ」
それなら早く言ってよ…。
昭をパッと離しても昭は沈まない。
「ぎゃぁぁぁ!」
「暴れると沈むぞ」
昭はピタリと止まった。
「フフフ…面白い」
シフォンが笑った。
昭は動かないまま周りを見渡す。
真っ青な海。
「シフォンの瞳の色みたい…」
綺麗…。
頭上に鳥の群れが集まる。
シフォンは海に腰を下ろした。
不思議な光景だ。
鳥が一匹、シフォンの頭に停まった。
まるで夢みたいな姿。
波の音が静かに一定のリズムを奏でる。
「昭、こっちに」
手を伸ばして昭の腕を引いた。
昭も水面に腰を下ろす。
鳥はシフォンの肩を伝い、昭の腕に乗った。
また一匹…また一匹と二人に停まる。
「昭、何故皆下着で泳ぐ」
「え?下着じゃなくて水着だよ」
「じゃあ下着でも良いと云う事か。下着の時は恥ずかしがるのに水着だと恥ずかしくないのか」
「うーん…そうだねぇ…水着なら平気かな」
シフォンは首をかしげている。
不思議そうに昭を眺めた。
「昭が人前で水着になるのはあまり良い気分ではない」
「…それって…どうして?」
シフォンが動いた。
鳥達が羽ばたく。
「理解しろ」
唇を塞がれて昭は驚いたが目を閉じた。
引き寄せる腕に身を任せてシフォンの首に腕を回した。
やっぱり二人が良い。
お家に帰りたい。
シフォンが…
「好き…」
風に舞う白い髪に黒い髪。
「…昭…」
足りないよ。
もっとキスして。
お家に帰るまでの元気を私に分けて…。
シフォンに会えるまでの時間を埋めて…。
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