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深夜1時。
昭はトイレに向かう。
2階の一番隅にあるトイレに眠い目を擦りながら向かった。
ボンヤリした灯かりの中の寂しいトイレ。
昭はトイレを済ませると直ぐに部屋に戻ろとした。
トイレを出た先に颯太が壁にもたれている。
昭は無視して通り過ぎると腕を掴まれた。
「何?」
「ちょっと来いよ」
「嫌だ。離せよ…」
だが嫌がる昭を引っ張って颯太は階段を上がって行く。
4階の屋上に連れ込まれた。
生温い風に髪が舞う。
「アンタ…何考えてんの?」
颯太は何も言わないで昭に近寄る。
フェンスに追い詰めると両手で昭の腕を掴んで押し付けた。
「ムカつくんだよ…何であんなヤツが良いわけ?完璧で綺麗で頭良くて…気持ちワリィんだよ。俺の方が少しバカでお前と釣り合ってんじゃねぇの?」
「お前ふざけんなよ?お前なんて初めっから眼中にないっつってんの!嫌だって言ってんのに何で分からないの?」
ここまで来ると腹が立って腹が立って仕方がない。
昭はあまりにも理不尽な颯太に怒りを通り越して呆れ返っていた。
「アンタさぁ…手に入らない女なんて居ないって言ってるけど…もう意地になってんでしょ?私が簡単にいかないから…だからってこんな事してサイテーなヤツ」
颯太の瞳がギラリと光った。
図星か…。
「昭が素直にならねぇからこうするしかねぇんだよ…」
顔が近付く。
強い力で腕を掴まれていて昭は必死で顔を反らした。
「嫌だっ…!止めてよ!…シフォン…シフォン!!助けて!!!」
カシャン…
小さな音。
フェンスの上に誰かの気配。
キュィィン…キィキィ…
赤黒く光るキューブがクルクル回る。
「…C1!C5!」
颯太の周りをグルグルと不気味な光を放ちながら回る。
「な…何だよこれ…」
昭は颯太から解放された。
「昭、大丈夫か」
大きな紅い月を背にフェンスに立つ姿。
白い髪が紅く燃える様になびく。
その顔は無表情だ。
「お前…いつの間に…」
颯太が見上げる先に居るシフォンは何も言わず見下ろしている。
「昭が助けて…と言った。だから来た。当たり前だ」
シフォンはフワリと浮く。
恐怖で立ち尽くした颯太だが一方で昭は不覚にもシフォンに見とれていた。
その姿はこの世の者とは思えない程美しかった。
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