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「実験をしようか」
シフォンの姿が突然消えた。
呆然と驚く颯太の直ぐ後ろから声がした。
「恐怖と云う『感情』の実験」
振り返ってた直ぐ後ろにシフォンが居る。
「昭を恐怖に追い込んだお前で試そうか」
そしてまた消えた。
「恐怖と云う『感情』は何処から来るのか。それは経験した事のない、又は経験したくない出来事が起こると人間は恐怖と云う『感情』に支配される」
キィキィ…ギィギィ…ギギギ…
キューブが颯太の周りを囲む。
奇怪な音を出す。
昭が颯太の前に立って睨んでいる。
「恐怖って…された立場にならないと解んないんだよね…シフォン…解る?」
昭の周りにもう一つのキューブがクルクルと回転していた。
シフォンの姿が見当たらないのに声だけが聞こえた。
「昭、私には恐怖と云う『感情』がまだない。解らない…どうしたら良いだろうか」
「怒ってるんでしょ?シフォンの好きにしてよ」
颯太は足を掴まれた。
地面から青くて白い陶器の様な肌をした手がしっかりその震える足を掴む。
ゆっくりゆっくり地面から出てくるシフォンの姿に颯太は恐怖から腰を抜かした。
「そウか。ならバ精神が壊レなイ程度にシておコう」
「⊃⌒¢∨ζыヤg″σ#т÷sd∃§?」
「別に…嫌だって言ってんのにアタシに付きまとうカらD¢?≫νлÅAサ◇Ψ…」
昭がフワリと宙に浮く。
大きな紅い月だけを残して真っ暗な闇が風景を飲み込んだ。
「な…何だよ…お前等何者なんだよ…」
颯太は震える。
恐怖で息をする事さえ出来ない。
足を掴んだ姿とは別に昭の身体を後ろから抱き締めるシフォンが居た。
「人間は闇を嫌う。何故か。闇には何もないからだ」
颯太を掴むもう一人のシフォンが闇に引きずり込む。
足から徐々に闇の中にズブズブと埋もれて行く恐怖に颯太は気絶した。
キュィィン…キィキィ…
辺りは元に戻った。
生温い風が吹いている。
「ちょっとやり過ぎちゃった?」
昭は地面に下りて気絶した颯太の肩をツンツンと指先で確認した。
「記憶は夢に変換しておく。起きたら少し恐怖と云う『感情』だけが残る。もう心配はない」
昭を抱き締めるシフォンが溜め息を吐いた。
「昭、良かった…」
安心したのかシフォンは少し笑った。
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