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2年A組は皆、テストの平均点を20点以上上げた。
担任は何も言わず、苦し紛れに頭を掻いた。
颯太は昭に近付かなくなってどこか怯えている様に伺えた。
これで家に帰れるんだ!
昭はバスの中でウトウトしていた。
あの大きな紅い月に映るシフォンの姿。
綺麗過ぎて目が眩みそうだった。
白い髪…うぅん…銀色なのかな?
時々光の角度で色んな色に見える。
きっと他の人なら魂さえ奪われるかもしれない。
私が奪われたのは心…。
…じゃあシフォンは私の何処に惹かれたんだろう…気になる…。
昭はそのまま眠ってしまった。
紅い月、抱き締める腕の感触、キス…。
シフォンって妖精の国の王子様だったら素敵かも。
だったらシフォンが言った通り、私はダイヤなのかもしれない…。
昔々、ダイヤと言う娘が居た。
ダイヤは山の中で一人で住んでいた。
赤い屋根の小さな家の周りはダイヤが丹精込めて育てた花が咲いている。
だが村の人々はダイヤを魔女と勘違いして皆で家を燃やしてしまった。
一輪だけ残った花。
ダイヤは悲しくて泣いた。
皆誰も解ってくれない!
私は一人ぼっち!
どうして誰も話を聞いてくれないの?
嘆き悲しむダイヤの涙が一輪の花に落ちた。
花は光を放った。
現れたのは背中に綺麗な羽の生えた男の子だった。
私は貴女をちゃんと見ていたよ。
花の妖精達は皆貴女が大好きだった。
さぁ泣かないで、私は貴女を愛する妖精の国の王子。
ダイヤ、貴女を私の妃としたい。
私を大切に育ててくれた貴女。
ダイヤ、私に相応しいのは貴女しかいない。
どうぞ私の愛の証を受け取って下さい。
ダイヤの左手の小指に花の形をして赤い宝石がついた指輪をはめると辺りは綺麗なお花畑になった。
ダイヤは妖精の国の王子様と幸せに暮らしましたとさ。
…小指に指輪?
愛の証?
『左手の小指なら邪魔にならない』
まさかねぇ…。
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