実験

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「ただいま…」 暗い家の中には人の気配がない。 昭は大きな鞄を玄関に置いた。 「シフォン…C5…C1…あれ?何で誰も居な…」 『キャァァァァァァ!!』 「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」 女性の絶叫に驚いて昭も叫んだ。 パチン… 灯かりがついて、何時もの様にシフォンが無表情でお出迎え。 「な…何?今の叫び声は…」 腰を抜かして廊下に座り込む昭にシフォンは何かを差し出した。 「…『恐怖の家』?」 「恐いってどんな『感情』なのか試しにホラー映画のDVDを観てみたが…さっぱり解らない」 何で真っ暗にして観るのよこの馬鹿! 昭を抱き上げて立たせるとシフォンは気になるのかさっさと居間に向かった。 神経を逆撫でする音楽が居間に響く。 「止めてよ!怖いでしょ!私怖いの苦手なんだからっ!眠れなくなったらどうすんのよ…」 「だったら私が一緒に眠ろう」 ガシャン! 昭の手からコップが落ちた。 「あぁ!せっかく集めたスワンキーグラスが…ちょっとシフォン!」 映画はクライマックスに向けて一番悲惨なシーンがテレビに映る。 『キャァァァァァァ!!!』 「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」 うずくまった昭は半ベソをかいて震える。 「昭、恐いのか。私には良く解らない。説明して欲しいのだが」 呑気にそう言ったシフォンに昭は手元にあったお菓子の箱を投げ付けた。 「馬鹿!自分で考えてよ!」 昭は怒って風呂場に向かう。 服を脱いでさっさと頭や身体を洗った。 湯船に浸かって周りの気配を伺う。 だ…大丈夫よ…。 怖くない…怖くな…。 キュィィン…キィキィ… 昭は驚いて湯船から上がりそのまま逃げる様に風呂場からダッシュでシフォンの元に向かう。 「いやぁぁぁ!」 シフォンに抱き付いて泣く昭にまた恐怖の絶叫が聞こえた。 「うわぁぁぁぁん!!もう止めてよー!!」 「すまない。今止めるから」 一気に静かになった居間に昭はホッとして胸を撫で下ろした。 「C5、タオルを」 キュィィン…キィキィ… あ!あの音はC1? さっき見当たらないと思ってたけど…何でお風呂場に…。 フワフワ浮かぶタオルを手に取ったシフォンが昭の身体を拭いた。 「涙が出る程恐かったのか…すまない事した」 シフォンは昭の涙をタオルで拭った。
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