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そのとき、今度はべつの女が王とチェシャ猫のいる広間にやってきた。
「貴様も何の用だ。アリスのことはどうでもいい」
「我が主をどこへやった」
「帽子屋のことか。なら」
「貴様には聞いていない。その尾を切り取られたくなくば、黙っていろ」
「帽子屋ならばアリスをつれに行ったが」
女は腰に携えていた剣を抜いて王につきつけた。
自らに敵意と殺意がむけられているにも関わらず、王は笑っていた。
「王の前で剣を抜けば、それは反逆行為と見なされるぞ」
王が指を鳴らすと、城の衛兵たちが女とチェシャ猫を囲んだ。
チェシャ猫はためいきをつく。
「三月ウサギ、キミは短慮すぎる。帽子屋を守ろうとするのはわかるがね」
「うるさい」
「ワタシはキミに巻き込まれやすいらいしな。まぁ今日は借りにしておいてやろう。ワタシも少し腹が立っているんだから」
チェシャ猫は鎖が巻きついた銃を取り出した。
「貴様の力なんぞいらないがな」
「そう言うな。同じ動物だろ?」
「ワタシはウサギで貴様は猫だろう」
「種類の問題ではなく、分類の問題だ」
チェシャ猫と三月ウサギのやりとりに王は笑う。
「もうよいか。処刑をはじめても?」
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