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アリスはふわふわとした感触に包まれていた。
まるでマシュマロの中に入っているようだ。
『甘ったるい』
がたん
と大きな音がした。
「起きなさーーーいっっっ!!」
耳元で大音量の叫び声。
アリスは耳をふさいで飛び起きた。
「あっ起きた」
「当たり前だ。お前の叫びはでかすぎる。少しは加減しろ」
黒いスーツの帽子屋がアリスに手を差し伸べてきた。
アリスはそれを見たが、自力で起き上がる。
白うさぎはパラソルをくるくると回している。
「どうしよう」
「白うさぎ?」
白うさぎは泣きそうに顔をゆがめた。
アリスはいやな予感に胸をふさがれる。
「まさか迷子」
「違う!」
白うさぎはアリスの言葉を遮った。
帽子屋がためいきをつく。
「迷子じゃないよ」
「普通案内人が迷うか?」
「だから迷子じゃないからっ」
帽子屋と白うさぎのやりとりに、アリスは頭痛がし始めていた。
自分たちの住む世界だろうに、なぜ迷う必要があるのだ。
「ハートの王~助けてくださーい」
「迷子だと認めたな」
帽子屋はシルクハットを脱いだ。
アリスは頬を生暖かい風がなでていくのを感じていた。
いやな予感がする。
「なぁここまずくないのか」
「なにがだ?」
「ここにいると気分悪くなる」
アリスがそう言ったときだった。
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