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ハートの王は顔をあげた。
かたわらで羽に頭をうずめていた鳥が目覚める。
「きたか」
王が立ち上がったとき、何もなかった場所から、アリスと白うさぎが飛び出してきた。
「王っ」
「また迷子になったか、白うさぎ」
「そんなことはあと!帽子屋がひとりで戦ってるの!いますぐ兵を動かして」
王はいぶかしげな顔をした。
白うさぎはじれったそうに状況を説明した。
王はそれで納得したらしく、しきりにうなずいている。
「兵は」
「動かさずとも平気だ。あいつも一応案内人としての力はあるから」
「えっ」
呆然とした白うさぎを眼中から追い出し、王はアリスを見た。
「待ちかねたよ、アリス」
アリスは茫然自失としていた。
「久しぶりだな」
のどが渇いてうまく声が出ない。
「母さんたちは元気か」
「なんであんたがここに…」
「この世界におれが属するものだからだ」
アリスとそっくりな顔をした青年王は笑った。
「兄貴…」
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