クオリフィカートー価値ある男ー

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ドタッ、バサバサ… 今、あたしはテロリストを追っている。 西洋人からは犬小屋とも呼ばれる狭い一般的な日本家屋。そこで、あたしはテロリストを追っている。 奴の名はチャバネゴキブリ。家族の平和を乱す邪悪なテロリストだ。 奴はとかく素早い。タンスの下、オーブンの横…とにかくあたしの入りこめないところに潜りこみ、鮮やかに、華麗に逃げる百計の知将だ。正直言って、悔しい。こんな下等動物一つ殺められないあたしが。 しかし、奴もついに尻尾を出した。奴はまだ中身の入っているポテトの袋に入りこんだのだ。 「年貢の収めどきだな…楽しかったぜ」 なんか気が付くと悪人みたいな台詞を吐いている。そして、 ぶしゅ――。 中身が惜しくもあるが、気にしない。全身を達成感がかけめぐる ―あたしは、テロリストを倒したのだ。 疲労感も負けずに全身をかけめぐる。あたしはそのまま床に倒れた… ぱりぱり。 軽快な音が響く。あたしの耳の近くでしている。目を開けると… そこには兄がいた。それも、ところどころにスプレーの痕がついたポテトの袋を持って。旨そうに頬張っている。 「あ…ああっ」 兄は幸せだった。 真実を知るまでは。
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