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「ご、ごめんなさい!僕がちゃんと前を見て、歩いていなかったから」
僕は自分のせいで転んでしまった、砂を払いのける人物に、謝罪の言葉を投げると、身体に付着した砂を、一通り払いのけた人物は、静かに答えた。
「別にいい……」
高くも低くもない、僕に聞こえるか聞こえないか、分からないくらいの小さな声。
かろうじて声質を聞いて、男性だと判断出来た。
何故なら見た目でその人物の性別を読み取る事は、完全に不可能だったから。
初夏だというのに黒のロングコートに身を包み、そのコートに付いているフードを深々と被り、おまけに黒のニット帽を目元深くまで被っている。更に大きめの黒のサングラスで、顔を隠すように身に付けているその男。
そして高級そうな黒の革靴。
190センチ近くある身長だが、見た目あまりにも痩せすぎているその身体。
若干見えるサングラスで隠れていない部分の顔も、女性のようにあまりにもきめ細かく、少年のようにも青年のようにも、見ようによっては女性のようにも見える。
年齢を読み取る事は不可能。
中性的な感じでサングラスを外せば、その下から覗く顔は誰が見ても、美少年と呼ぶ事だろう。
謎の男性はまるで何事もなかったかのように、僕と弥生を置いて歩き出した。
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