いつかのために

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「心配しなくても大丈夫よ。きっと貴方なら大丈夫。」 私は今年から老人ホームで働く事になった。新米の介護職員である。 「そうですかね。私これからどうやって生きていけばいいかわからないんです。夫もいないですし。経済的にも。とても不安で。」 一人の利用者と話している内に私の悩みの相談になっていた。 「私は夫をなくしてるの。その時はすごく不安だったわ。」 彼女は目に涙を浮かべながら話した。 「あの時夫はいったの。その言葉が今の私を支えてるのよ。」 「何と言われたんですか。」 「内緒。これは私だけの言葉の宝物よ。」 彼女は笑いながら人指し指で口をおさえた。 「貴方も頑張ってね。人間は不安を忘れると努力をしなくなってしまうわ。貴方の不安は今の財産よ。」 彼女は終始笑顔ではなしていた。 そして私はその日頂いた言葉を胸に頑張って働いていく事を決意した。
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