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叶えたくない幻想と、必ず叶えたいという幻想で……俺は、前者の幻想が現実になってしまった。
「ッ……真由美ィィィ!!!!」
「クックック……美味そうだよなぁ、姫様の血肉はよぉ!!!!」
相手が真由美の頭を、乱暴に掴みあげた瞬間……俺の中で何かが切れた。
「真由美を……返せェェェ!!!!」
俺は我を忘れて、自分の武器である鎖を振り回していた。アイツを救いたい、助けたいという想いが……俺を動かしていた。
「や、ヤメロ!!俺が何をした!!そんな女に……何の価値がある!!!」
「価値とか、そんな大それたものなんか無い。……俺が守ると決めた女を、お前が傷付けた。それ以上も以下も無い」
ドシュッ!!!!
「ガハッ……!!」
何かに胸と四肢を貫かれた俺は、傷口から大量の血が飛び散った。
「ヒャハハハハハ!!!!黒翼の錬金術師、撃破だ……ぜ?」
『謙也君、彼殺しちゃいます?』
『薬師、少しは衝動を抑えんしゃい』
叶えたくない筈の幻想を、願ってしまった瞬間……真由美は、『魂』と『器』が切り離されていた。
『なっ!!アレじゃ……真由美が死んじまうぜよ!!!!』
『落ち着きなさい、謙也君。あの方は、【何があっても手を出すな】って言ってました……。ですから、今手出しする事は……』
あぁ……目の前が霞んでいく。誰かの話し声が聞こえる……。けどっ、もうっ……これ以上は意識が……!!
「真…由……美……。俺は、お前を……愛し…て……い…る。最……後ま…で、守って…やれ……なくて……ごめ、んな……」
そして俺は、その言葉を最後に長き眠りについた。またこの瞳にアイツが映るのは、何時になるのだろう……。
「ウィル、バー……わた、しも……貴方を…… ……」
『劉、コレで良かったのか?』
『別に構わないさ。……彼女が生まれ変わった時、あの記憶を思い出せば……ね』
夜空が血で赤く染まっていく。暗く悲しい夜空に、恐怖の鮮血の雨を降らせていた。
『さぁ……ショータイムの、始まりですよ……?』
運命の扉は500年後に開かれるまで、何があろうと……開く事はあり得ない。
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